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「シンタルスス」から「大きな死んだトカゲ」へ:学名変更のドラマと30体の集団化石
メガプノサウルス(学名: Megapnosaurus rhodesiensis)は、ジュラ紀前期(ヘッタンギアン期〜シネムーリアン期・約2億年前〜1億9000万年前)のアフリカ南部(現在のジンバブエ共和国や南アフリカ)および北アメリカ大陸に生息していた小型〜中型の肉食恐竜(獣脚類・コエロフィシス科)です。かつての恐竜図鑑では長らく「シンタルスス(Syntarsus)」という名前で紹介されていましたが、動物命名規約上のルールによって劇的な改名を経験したことで有名な恐竜です。
ホロタイプ標本(QG/1)は1963年、アフリカ南部(当時の南ローデシア、現在のジンバブエ)のフォレスト・サンドストーン層(Forest Sandstone)から発見され、さらにその後、同じ地域の泥岩層から幼体から成体まで少なくとも30体以上もの骨格が一箇所に折り重なった大規模な集団化石(ボーンベッド)が発掘されました。
1969年、古生物学者マイケル・ラー(Michael Raath)博士は、足首の骨が鳥のように癒合している特徴から本種を「シンタルスス・ローデシエンシス(Syntarsus rhodesiensis:癒合した足首)」と命名しました。ところが30年以上が経った2001年、昆虫学者マイケル・イヴィーらによって、実は1869年にすでに同じ「Syntarsus」という学名がコリモディア科の小さな甲虫(昆虫)に付けられていたことが指摘されました。国際動物命名規約では同じ学名を複数の動物に使うことが禁じられているため、2002年にイヴィーらはギリシャ語で「大きな死んだトカゲ(化石の獣脚類であることへのユーモアを込めた造語)」を意味する「メガプノサウルス(Megapnosaurus)」という新しい属名を与えたのです。
実寸サイズと俊敏なスケール:全長約3.0メートル・全高約0.9メートルの軽量級スプリンター
メガプノサウルスの成体標本に基づく実寸サイズは、全長約3.0メートル(約2.5〜3.0メートル)、水平姿勢における腰高での全高約0.9メートル(首を持ち上げた頭頂高で約1.0〜1.1メートル)、推定体重約30キログラム(約25〜35キログラム)と算出されています。
現代の成人男性(身長約1.7メートル)がメガプノサウルスと並んで立った場合、恐竜の背中の高さ(全高約0.9メートル)はちょうど大人の腰骨あたりに位置します。鼻先から極めて細長い尾の先端までを含めると全長約3.0メートルに達しますが、体幹や四肢がツルやサギのように細く、全身の骨が空洞化(含気骨化)していたため、体重約30キログラムという大型犬ほどの驚くべき軽さでした。この徹底的に無駄を削ぎ落とした流線型のボディにより、砂漠や川辺を時速40キロメートル近い猛スピードで疾走することができました。
鳥のように癒合した足首の骨と上顎のくびれ・骨組織学が明かした成長曲線
メガプノサウルスの骨格解剖学において最も顕著な特徴は、旧名「シンタルスス」の由来となった「足首と足の甲の骨の強固な癒合」です。すねの骨(脛骨)と足首の骨(足根骨)が一体化して「脛足根骨」となり、さらに足の甲の骨(中足骨)の上部も癒合して「足根中足骨」を形成していました。これは現代の鳥類と全く同じ構造であり、高速で走る際に足首が捻挫するのを防ぎ、地面からの反発力をロスなく推進力へ変えるための高度な適応でした。
また、細長い上顎の先端(前上顎骨と上顎骨の境目)には深い切れ込み(サブナリアル・ギャップ)があり、獲物に噛みついた際に逃げられないよう引っ掛けるフックとして機能していました。
さらに、ジンバブエで発見された30体以上の集団化石の骨の断面(成長停止線)を分析したアニス・チンスミー博士らの研究により、メガプノサウルスは孵化してから約6〜7年で成体サイズ(全長3メートル)に成長し、寿命は7〜10年ほどであったことや、体格がガッシリした個体と華奢な個体の2タイプ(オスメスの性的二形)が存在していたことまで科学的に解明されています。
ジュラ紀前期の乾燥した砂丘オアシスでの群れ行動と狩猟スタイル
メガプノサウルスが生息していた約1億9500万年前のアフリカ南部(フォレスト・サンドストーン層)は、広大な風成砂丘(砂漠)が広がり、その合間に季節的な河川やオアシスが点在する半乾燥地帯でした。ジンバブエで見つかった30体ものメガプノサウルスの集団化石には、他の種類の動物が一切混ざっておらず、彼らが普段から「群れ(パック)」を作って一緒に行動し、深刻な干ばつや突発的な鉄砲水によって群れごと同時に命を落としたことを強く物語っています。
当時の生態系には、全長4〜5メートルの初期の竜脚形類(原竜脚類)であるマッソスポンディルス(Massospondylus)や、小型の鳥盤類であるレソトサウルス、初期の哺乳類に近いキノドン類などが暮らしていました。体重30キログラムのメガプノサウルスは、普段は素早いトカゲや小動物を単独で捕食しつつ、群れで協力する際には自分たちよりはるかに大きなマッソスポンディルスの幼体や衰弱した個体を包囲し、素早いヒット・アンド・アウェイ戦法で仕留めていたと考えられています。