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怪獣王「ゴジラ」の名を冠した公式学名:ケネス・カーペンター博士による発見と命名
ゴジラサウルス(学名: Gojirasaurus quayi)は、三畳紀後期(ノーリアン期・約2億1000万年前)の北アメリカ大陸南西部、現在のアメリカ合衆国ニューメキシコ州に生息していた中型の肉食恐竜(獣脚類・コエロフィシス上科)です。日本が世界に誇る東宝の特撮怪獣映画『ゴジラ(Gojira)』にちなんで正式な国際動物命名規約に基づく学名が付けられた実在の恐竜として、日本のみならず世界中の恐竜ファンから絶大な知名度と愛着を集めています。
ホロタイプ標本(UCM 47221)は1981年、アメリカ・ニューメキシコ州クワイ郡(Quay County)のレヴェルト・クリークに露出する三畳紀後期の地層「クーパーキャニオン層(Cooper Canyon Formation)」から発掘されました。回収された化石は1体の若い個体(亜成体)のものとみられ、鋭い歯、4個の胴椎(背骨)、肋骨、肩甲骨、腹肋骨、恥骨(骨盤の一部)、そして脛骨(すねの骨)と中足骨が含まれていました。
1997年、東京生まれで幼少期に1954年公開の初代『ゴジラ』を観て古生物学者を志したデンバー自然科学博物館のケネス・カーペンター(Kenneth Carpenter)博士によって正式に記載論文が発表されました。カーペンター博士は、当時知られていた三畳紀の獣脚類の中で本種が怪獣のように飛び抜けて巨大であったことから、英語の「Godzilla」ではなく日本語原音のローマ字表記である「Gojira」をそのまま属名に採用し、発見地のクワイ郡にちなむ種小名と合わせて「ゴジラサウルス・クワイイ(Gojirasaurus quayi)」と命名したのです。
実寸サイズと三畳紀の巨人スケール:全長約5.5メートル・全高約1.8メートルの黎明期ハンター
ゴジラサウルスのホロタイプ標本(長さ約47センチメートルの脛骨などから推定される亜成体サイズ)は、全長約5.5メートル(完全に成熟した個体では全長6.0〜6.5メートルに達した可能性もある)、水平姿勢における腰高での全高約1.8メートル、推定体重約180キログラム(約150〜200キログラム)と算出されています。
現代の成人男性(身長約1.7メートル)がゴジラサウルスと向かい合った場合、恐竜の腰の高さ(全高約1.8メートル)は人間の頭上をわずかに上回り、細長い首から鞭のように長い尾の先端までが全長約5.5メートルに及びます。白亜紀のティラノサウルス(全長12メートル・体重6〜9トン)に比べればずっと小柄ですが、同じ三畳紀後期の北米を生きていた代表的な肉食恐竜コエロフィシス(全長2〜3メートル・体重20キログラム前後)と比較すると、ゴジラサウルスは体長で約2倍、体重では実に8〜10倍近くに達する「三畳紀の怪獣王」と呼ぶにふさわしい巨体を誇っていました。
細身でしなやかなコエロフィシス上科の骨格構造とキメラ標本論争の検証
ゴジラサウルスの骨格は、ゴツゴツした映画のゴジラとは対照的に、初期の獣脚類(コエロフィシス上科)特有の「細長くスマートで軽量な構造」をしていました。全長の半分近くを細長い尾が占め、S字型に湾曲した柔軟な首と細長い吻部、そして中空構造(パイプ状)になった軽い骨を備えていたため、全長5.5メートルでありながら体重約180キログラムという驚異的な軽さを実現し、俊敏に走ることができました。背骨の神経棘(突起)は前後のコエロフィシス類よりもやや高く発達しており、背中の筋肉を強固に支えていました。
なお、2007年にはスターリング・ネスビットらによる再調査において、「ゴジラサウルスの背骨や骨盤は当時の大型爬虫類(ラウイスクス類のシュヴォサウルスなど)の骨が混ざったキメラ標本ではないか」という疑問が投げかけられたことがありました。しかし、脛骨(すねの骨)や恥骨、ナイフのように扁平で鋸歯を持つ歯は紛れもなくコエロフィシス上科の大型獣脚類のものであり、三畳紀後期の北米に全長5.5メートル級の大型獣脚類が存在していた事実は揺るぎないものとなっています。
巨大ワニ型爬虫類が支配する三畳紀後期の大地での生存競争と生態的地位
ゴジラサウルスが生息していた約2億1000万年前の北米南西部(チンレ層群・クーパーキャニオン層)は、超大陸パンゲアの内陸部に広がる、雨季と乾季の差が激しい季節性の大河川と針葉樹林の氾濫原でした。
当時の陸上生態系は、まだ恐竜が絶対的な支配者ではなく、全長5〜7メートルに達する巨大な陸生ワニ類の仲間(ポストスクスなどのラウイスクス類)や、水辺に潜む巨大な植竜類(フィトサウルス類)、装甲をまとった草食のアエトサウルス類、そして巨大な単弓類(ディキノドン類のプラケリアスなど)が覇権を争う群雄割拠の世界でした。小柄なコエロフィシスが昆虫や小動物を狩るしかなかった中で、いち早く全長5.5メートルへと大型化を果たしたゴジラサウルスは、中型の草食爬虫類や初期の植物食恐竜(チンダルギアなど)を単独またはペアで仕留めることができ、のちのジュラ紀に恐竜が地球の頂点へと躍り出る礎を築いた先駆者だったのです。